エンドロール

 

 

 

 恋は、楽しくて幸せで、そういうものだと思っていた。

 

 もし、この恋を一つの映画みたいに振り返ったら、悲しくて、辛くて、泣いてしまう場面もたくさんあったけれど、それでも、見終わってから、あたしは笑って客席から立つことができるだろうか。

 

 つらくて、苦しくて、でも、そんな風にあなたを思っている時間も、本当は嫌いじゃなかった。でも、嫌いじゃないけど、苦しかった。

そんな時に他でもないあなたに、抱きしめてほしかった。

 

 すきの大きさなんて測れないし、測ろうとするものでもない。でも、あたしは、あなたと同じ気持ちでいたかった。同じ大きさで思い合って、二人で手を繋いで歩きたかった。あなたを思うが故に、あたしの気持ちが大きすぎて、重たくなっていってしまうことに気づいてしまう。

 

 誰でもいいわけじゃなくて、あなたが良くて、でもあなたじゃあたしは幸せになれない。

あたしは、あなたのことを好きでいる気持ち以上に、自分自身のことが大好きだから。

 

 もう少し、時間が経ったら、この映画を笑って思い出せるだろうか。温かい気持ちで、棚に仕舞えるだろうか。

 

 でもあたしは、まだこの映画のエンドロールを流す勇気が出ずに、まだ一人で泣いている。

 

 

 

 

 

「わたし」というアカウント

 

 人生もログアウトできたらいいのに。

 

「私」というアカウントに、自由に、好きなときに、ログイン、ログアウトできたら。

今、アカウント続行か、アカウント削除しか選択肢がないのだ。

 

あたしは、あたし自身のことをそれほど嫌いではない。でも、どうしようもなく生きていることがしんどくて、面倒で、なにもかもやめて逃げてしまいたくなることがある。

日々の中で小さな幸せを見つけることはできるし、あたしという人間を、殺してしまいたくなるほど嫌いなわけではないのだ。

 

 それでも、消えていなくなりたくなる。死にたいわけじゃない。でも、消えたい。

 

 人生も、SNSみたいにアカウントを削除してから1か月くらいの猶予があればいいのにな、戻ってきたくなったら戻ってこれるような。

 

 

 

 

矛盾

 

 

 特別な存在になりたい。

 

 でも、そう思うのと同時に、誰とも異ならない、普通でありたい、とも思う。

 

 あたしの感情はひどく矛盾している。

 

 飛びぬけた容姿も、技術も、才能も、何も持っていないけれど、どこにでもいる、平々凡々な人間だけど、それは普通でありたい心にとっては良い現状のはずなのに、この現状を抜け出したい自分がいる。

 

 でも、自分がどこにでもいる普通の人間であると思う時もあれば、周囲の人間と比べてものすごく劣っているようにも感じる。

周りと比べて劣っているということは、標準に達していないということで、普通ではないのだ。異端でありたいわけじゃない。普通になりたい。

 

 

 

期待のヘドロ

 

 「期待をしない」

これが、人生を楽に生きるコツだ、と何かで見た。

そうかも。期待をするから、その通りにならなかった時に、勝手にガッカリしたり、裏切られたような気分になるのだ。

 

 期待をしなければいい。

 

わかっていても、これがうまくできない。

どうしても、期待してしまう。

あたしが思うのと同じくらい、相手もあたしの事を大切に思ってくれている、特別に思ってくれていると、期待して、いつも裏切られた気分になる。

相手は何も、していないのに。

 

人に、寄りかからずに生きていきたい。

 

 人間、誰にも頼らずに一人で生きていくことなんてできない。だから、「自立する」というのは、つまり「寄りかからずに生きること」だと思う。

 

 

 

こころ

 すきだ、と思ったその時に、その瞬間の気持ちを新鮮なまま、大切にどこかにしまっておきたい。

 ときめきを感じたその胸の高鳴りだったり、きゅっと締め付けられるような感じだったり、でも、その締め付けがどこか心地いいような、落ち着かないような。

そんな、どんな言葉でも明確に言い表すことができないような、そんな感情を、思い出してぎゅっと抱きしめて眠りたくなる日がある。

自分自身、こころの形が見えるわけではないのだから、頭で考えていることと、心で感じていることが同じかどうかもわからないときもある。自分でさえそうなのだから、どれだけだいすきな人であっても、だいすきな人が、同じように自分のことを大好きでいてくれているのかなんて、わからないし。

そんな時、どうしようもなく不安になってしまうのは、本当にどうしようもない。

だから、以前感じた自分のときめきをだきしめてねむりたい。

今までにもらったうれしいこと、たのしいことを全部、大切に、新鮮に、しまっておきたい。

どうしようもなく不安なときは、自分が感じた確かな気持ちを、ぎゅっとして、安心したいのだ。

 

 

 

 

 

daily

 普段生きてる中で、ほんとになんでもないふとした瞬間に「もう君がいないこと」を実感する。

 

 ベッドに寝っ転がってぼうっと天井を眺めていたり、食パンを焼いてカフェオレを飲んでいたり、ギターを弾いていたり、本当にそんな、些細ななんでもない日常の中に、ほんの微かに君がいた日々があって、君がいた日々がもうない。

もうベッドに入る時に君がじゃれついてくることも、あたしの食パンを狙いに来ることも、ギターを弾くとうるさそうに、でもどこに行くでもなく横でうたたねをする君を見ることも、もう、ないのだと思うと、息が詰まって視界がぼやける。

 

 君がいなくたってこの世界は変わらないし、あたしは相変わらずたくさん寝ては食パンとカフェオレを飲んで、ぼーっと1日を過ごして、また寝てを繰り返している。君がいた頃と何ら変わらない。

変わったのは、もうこの日常に、君の温もりがないってことだけだ。